Column

足をまとう(1):家にとどまる

つい先日、雪駄を買った。

辻屋本店という浅草のお店だ。
玉川奈々福さんという浪曲師の方がSNSで紹介していたのがきっかけだ。

この雪駄を買うまでに色々なことがあったので、それを少しづつ勝手に連載してみようと思う。

第一回の今日は「家にとどまる」という副題をつけた。文字どおり<stay home>。コロナウイルスが足についての物語の始まりだ。

コロナウイルスが感染拡大の一途をたどり、街から人が消えた期間。私の住む街、東京ではほとんどのお店が閉まっていた。毎日行っていたカフェも、お気に入りの本屋さんも。

あれほど人が多かった街が静かになって、鳥の声がよく聞こえた。ネズミが道路の真ん中を走っていた。

家からは出れなかったから、家を快適にしてみた。掃除をして、ものを少なくしてスッキリとさせた。


もともと在宅ワークだったが、大学のオンライン授業が始まるということで、パソコンのディスプレイを買った。

これで家は完璧だ。

そう思ったけれど、やはり日光は浴びたいし、歩きもしたい。

そこで近くの公園を毎朝歩くことにした。

5月の間、雨の日以外は公園のまったく同じコースを歩き続けた。同じコースをあるくことで、散歩道の両脇に生えている植物に目が向くようになった。

気づいたら緑が濃く、豊かになっていて、葉っぱがつやつやと輝いていた。いつの間にか白いヤマボウシがまるで雪をかぶった木のように咲いていて、地面を這うように金糸梅が黄色の花を咲かせていた。歩く時の気温も少しづつ上がっていって、自粛が開ける頃には紫陽花が満開になっていた。

毎日同じコースを歩くことで、日々変容する景色の存在に気がついた。いままで気にもとめていたなかった自然のリズムを感じた。

もしかしたら今回のことで、自分の生活を見直したり、自然に思いを馳せた人も多いのではないだろうか。

都市の中に残された僅かな自然を歩くということへの喜びが芽生え始めていた。