こんにちは。しんいちです。
先日『サスペリア』という映画を見てきました。
『サスペリア』(Suspiria)は、もともと1977年制作のイタリアのホラー映画です。今回は『君の名前で私をよんで』のルカ・グァダニーノ監督と、レディオヘッドのトム・ヨーク がタッグを組み、リメイクされました。
映画を見終わってもしばらく呆然としてしまう凄まじい映画でした。
ネタバレを含みつつ感想を書きますので、まだ観ていない人は気をつけてください。
概要
作品名:『サスペリア』(2019)
監督:ルカ・グァダニーノ
ティルダ・スウィントン (as マダム・ブラン)
クロエ・グレース・モレッツ (as パトリシア)
あらすじ
1977年、ベルリンを拠点とする世界的に有名な舞踊団<マルコス・ダンス・カンパニー>に入団するため、スージー・バニヨンは夢と希望を胸にアメリカからやってきた。初のオーディションでカリスマ振付師マダム・ブランの目に留まり、すぐに大事な演目のセンターに抜擢される。そんな中、マダム・ブラン直々のレッスンを続ける彼女のまわりで不可解な出来事が頻発、ダンサーが次々と失踪を遂げる。一方、心理療法士クレンペラー博士は、患者であった若きダンサーの行方を捜すうち、舞踊団の闇に近づいていく。やがて、舞踊団に隠された恐ろしい秘密が明らかになり、スージーの身にも危険が及んでいた――。
感想
圧倒的な映像美とレディオヘッドのトム・ヨークの音楽の組み合わせがなんと言っても最高です。最近のホラー映画は映像の耽美さが素晴らしいですね。アートなホラー映画が増えて、人気を集めているのはなにか不思議な感じがします。
ホラー映画が注目を集める背景:死をみつめる
これは「ジョジョの奇妙な冒険」の作者の荒木飛呂彦さんがおっしゃっていたと思うのですが、ホラー映画には人生が詰まっています。もちろんB級なものや、ただのスプラッタがあるのは否定しません。ではなぜ人気が集まり始めているのでしょうか。私が思うにそれはホラー映画は圧倒的に「死」を扱うからだと思います。
人間である以上いつかは死をむかえます。そして人はそのことを考えずに生きている。それをちゃんと見つめて生きていこうといったのが哲学者のハイデガーや、最近ではスティーブ・ジョブズも言っています。「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことを私は本当にやりたいだろうか?」は有名な言葉ですね。
ホラー映画では人が死にます。それは理不尽なまでにあっさりと。
人生も同じです。私達はあっけなく生まれて、あっけなく死ぬんだと思います。もちろん自分はしんだことがありませんし(ハイデガーが云うように死は変わってもらうこともできませんが)、語ることはできないと思います。
物語を支える歴史的な厚み
もっとも重要な登場人物として精神科医の男性がいます。彼は第二次世界大戦で奥さんと離れ離れになってしまいます。そのことをずっと心に抱え、頻繁に彼女と過ごした家に訪れます。
この時代は東西ドイツの国境があった時代です。戦後すぐに傷が癒えない時代だったと云うことができると思います。
このような物語は歴史的な背景を厚みにして、舞踏団によるマザーの復活という儀式を取り扱います。
マザー

ものがたりの最後で、主人公のスージーは「三人のマザー」の一人に選ばれます。彼女は大いなる力を手に入れる。もともと舞踏団もマザーの復活を目的とし、殺人等の儀式を行ってきたのですが、選ばれたのはスージーでした。このマザーというのが、凄まじい力を持つ。人の頭を触れずに爆発させ、人の記憶まで消してします。
ラストに精神科医の辛い記憶をスージー(マザー)が消し去り、彼の思い出の家では誰かが楽しく過ごしている、というシーンになります。
ここで2つの仮説が生まれます。
①マザーの力で辛い記憶のないパラレルワールドが生まれた
②思い出の家を忘れ、訪れなくなってから数年後の世界
わたしはおそらく前者だと思っています。
マザーは恐ろしい血の儀式を経て誕生したと同時に、苦しみを忘れさせる聖母の面も持ち合わせているのです。
そこがこの映画のもっとも美しいポイントだと思います。
PS)文脈とはそれますが、個人的もっとも綺麗なホラー映画のシーンは「悪魔のいけにえ」のラスト10秒ほどです。
公開情報
ホラー映画なのでとても怖いですし、残酷なシーンもありますがそれでもおすすめの映画です。
都内では
TOHOシネマズ日比谷
TOHOシネマズ新宿
ヒューマントラストシネマ渋谷
TOHOシネマズ六本木ヒルズ
池袋HUMAXシネマズ
TOHOシネマズ錦糸町
などで上映中です。
くわしくは公式サイトを御覧ください。