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続・日々の生活を丁寧にすることの大切さ:マインドフルネス、民藝から坂口恭平さんまで

こんにちは。しんいちです。

今日は前回の記事に続き、「日々の生活を丁寧にすることの大切さ」について書きます。前回の記事は外山滋比古さんの『知的生活習慣』をもとに話を進めていきます。

マインドフルネス、「いま、ここ」を生きるムーブメント

一時期「マインドフルネス」という言葉が流行りました。アップルの創設者であるスティーブ・ジョブズ氏や、マイクロソフト社が導入するなど海外で人気を集め、その方法論が「マインドフルネス」という言葉で再輸入されています。

「マインドフルネス」とは一日数分から数十分の瞑想により、こころを「いま、ここ」に留める方法のことです。「いま、ここ」と言われてもなんとなくどういうことか分かりづらいですよね。

現代社会では未来のことが不安になったり、過去を後悔するなど、不確実でどうしようもないことにばかり心を奪われているといいます。例えば、学生だったら明日のテストはどうしよう。テスト後にはもっと勉強しておけばよかった。。なんて思います。社会人でも明日のプレゼンうまく行かなかったらどうしよう、、などです。こういった不安や後悔はたくさんしてきたと思います。

しかし未来を心配したり、過去を後悔しても何もポジティブな変化は生まれません。未来が不安なら、その不安の対策を「いま」行うしかないです。過去を後悔しても過去は変えられません。だからこそ、「いま、ここ」に意識を集中する必要があるのです。

この「マインドフルネス」が注目を集める背景には、忙しさのあまりに、まさに「心」を「亡くして」しまっている現代社会の違和感があると思います。

知的生活習慣と健康的生活習慣

外山滋比古さんは著書『知的生活習慣』の中で、「知的生活習慣」と「健康的生活習慣」という言葉を用いて現代社会の問題に切り込んでいます。

外山さんによれば、現代社会はあまりにも知識重視になっています。<「知識は力なり」(フランシス・ベーコン)は、それを予告する言葉である。知識尊重の思想が近代教育をおこした。学校は知識の伝授に多忙で、生活が大切であることを忘れたか、それえを考えようとしなかった。>というように、我々は知識を得ることが大切だと学校で教えられてきましたが、生活の大切さ、つまり洗濯をしたり、料理をする大切さをほとんど学んできませんでした。

生活軽視の現代人には「生活習慣病」という病気によって警告が発せられています。そして、生活習慣病で体に不調がでるだけでなく、心の不調も起きていると指摘します。<生活習慣病が浮かび上がらせたのは。具体的、行動的習慣であって、食事と運動が中心の、フィジカルな生活習慣である。>とした上で、<知識、情報の溢れる現代では、健康的生活習慣だけでは不十分である。そのため、精神の不具合や、障害を起こすことが多くなる。>と、身体だけではなく、心を整える生活習慣の必要性にも言及します。

知識偏重の社会ではいかに多くの物事を覚えているか、知っているかが大事になってきます。しかしそこにはデメリットもあります。例えば、自分で考えることをしなくなり、知識をえることで何かを解決するようになってしまうこと。それにより、思考力が失われます。またなにかを忘れるのは悪いことだとみなされがちです。

しかし、忘れるということでむしろ、心の健康が保たれる、と筆者はいいます。忘却など、情報化社会の中で心の安定を図ることを「知的生活習慣」という言葉で表しています。これは以前の記事でも紹介していますので、くわしくはこちらを御覧ください。

この本でも学校教育が知識重視になり、日々の生活がおろそかにされた社会への警告をし、以下のように述べています。

人間は知識のために生きるのではない。より良く生きるためにある程度の知識、技術が必要なのである。

日々の生活が魂を動かす

以前は民藝運動について少し勉強をしました。『民藝な暮らし』という丸山茂樹氏の著作の中で、以下のような一節があります。

自然の深い本意を、畏まりながら書き伝えた河井(寛次郎)なら、こう言うかもしれません。「効率だけが良き文化を決定しない。今の日本は、モノの豊かさだけを見るとこんな幸福な国はないが、日本の憂いは、人間が人間らしい生活をすることが少なくなったことだ。(中略)非効率な作業は魂を深く動かし、愛と道徳が涵養される」

『民藝な暮らし』丸山茂樹著 p121

この前100円ショップにいって驚いたのは、お米を研ぐためだけの器具や、りんごを等分するためだけのカッターなどが置いてあったことです。これはひと手間を省くものとして開発されたのでしょうが、そこまで横着しなくてもいいのではないかと思いました。これだけに限らず、例えば料理も外食で済ませようと思えば、お金を払い済ませてしまえる時代になりました。

外山氏がいうように、毎日の生活を忘れてしまった結果、心に不調をきたしたりする場合があるのでしょう。

坂口恭平さんという方がいます。彼は自身のうつの治療のために小説を書いたり、詩を歌ったり知ています。彼は最近『料理』をしており、それが一冊の作品『COOK』になっています。料理の効果は著しかったようで、彼のツイッターを見ていると料理や他のさまざまな習慣によって症状が改善されていく様子を見ることができます。

『COOK』でも、お皿洗いでも、アイロンがけでも、すべては「生活」の基本的で当たり前なことと思われるかもしれません。当たり前にみえるから、あまり重要視されなくなった、この基本的なところに大切なことがたくさんつまっています。

仕事で忙しい時にそっとホッと心を落ち着かせて、自分のペースをおとしてくれる。それが私にとっての家事であり、生活です。